「学校の殺人」/ジェームズ・ヒルトン
「学校の殺人」は、著者のジェームズ・ヒルトンが書いた、ミステリー小説です。
実は、こちらの作品は著者にとって唯一の長編ミステリー小説です。
およそ60年前の作品なんですが、とても読みやすく、物語自体はシンプルなんですが非常にクオリティが高い作品となっています。
今回はこちらの作品についての紹介と、感想を語っていこうと思います!
「学校の殺人」あらすじ
あらすじ
探偵手腕の持ち主である文学青年コリン・レヴェルは、母校の校長かr、最近学内で発生した突発事故の調査をしてもらえまいか、という手紙を受け取った。
三ヶ月ほど前、寄宿舎で寝ていた生徒の上に重いガス灯用具が落ちて即死してしまったのである。
陪審員たちは、「事故死」の評決を下した。
しかし、その生徒の奇妙な遺言状が発見された結果、事件は新しい様相をおびるに至った。
簡単に説明すると、ある学校で起きた連続事故死を、素人探偵のレヴェルくんが調査しに行く物語です。
第一の事故は、生徒の上にガス管が落ちる事故。
第二の事故は、水を張ってないプールに生徒が落ちる事故。
第三の事故は、とある教師が精神性の病で自殺。
3つの事故の時間軸は近くないのですが、事故にあった生徒は莫大な遺産を持つ人間だったので、「殺人」であってもおかしくない、というのが最初にレヴェルくんが持つ疑いです。
レヴェルくんが調査を進めていくうちに、だんだんとおかしな雰囲気になっていきます。
思わず読み進めてしまう不思議な魅力を持つ作品です。
以下からは、私の感想になりますのでネタバレが嫌な方は、ここでストップ!
(トリックのネタバレはしません。)
「学校の殺人」を読んだ感想/個人的評価
ミステリー好きの私としては、星4の作品でした。(星5がMax)
個人的にはこんな感じの感想です。
・非常にシンプルなミステリー
・余計な装飾語がなく、淡々とした文章が読みやすい
・総合的にバランスがとても良い小説
以下から面白いポイントをあげていきますね。
これが唯一の長編ミステリー小説ってクオリティ高すぎる
まず読み終わって驚いたのが、この作品が最初で最後の長編ミステリー小説ということです。
「なんでこの作品しかないんだ!!もっと読みたかった」と思うほど口惜しいです。
個人的な感想になりますが、最近のミステリー小説って、奇抜なトリックや叙述トリックを使いがちだと思ってます。
ですが、この作品は奇抜なトリックを使ったわけでもなく、どんでん返し系の物語でもないのに、ミステリー小説として非常に優れています。
物語が進むにつれて疑惑はあるのですが、今ひとつ確信をつくような場面が出ず、悶々としながら最後の謎解きを待ちます。
事件という事件も、3つの事故だけ。
それ以外は、主人公のレヴェルくんが毎日調査しながら、他の容疑者たちと過ごしていく風景だけです。
非常に淡々としているのでもどかしく、読者にとっては最後までの期待値が上がる時間です。
そして最後の謎解きを読むと、「あ、そういうことだったのか!」と納得する謎解きになっています。
謎解きも他の作品と比べてとてもシンプルなんですが、すごく気持ちがいいです。
何度も言いますが、総合的にバランスの良い作品です。
読者への誘導が上手すぎる
まず最初の事故である、生徒の上にガス管が落ちてきた件で、動機が十分ある容疑者が一人浮かび上がります。
しかもその後の事故が起こる度に、その容疑者への疑惑が高まります。
でも読者に与えられた情報だけだと、ほとんど証拠がないんです。疑惑だけがずーっとついてまわります。
ここでポイントなのが、全て主人公のレヴェルくんの目を通して見てる状態なんで、その状態を上手く使って読者を誘導しています。
そのため、最後の謎解きで読者は驚くべき真実がわかるという作りになっています。
これがミステリー好きには、もーーーーたまらない!楽しい!
王道の作りをしていますが、こういった基本が著者の技量を際立たせるんだなと思いました。
まとめ
「学校の殺人」は、とある読書家から教えてもらったのですが、期待以上の出来栄えでした。
残念ながら、現在は絶版で古本屋しか売ってませんが、ぜひ図書館などで借りて読んでみてください。
もっと読む人が増えると嬉しいです。
読んだ方はぜひ語り合いましょう!!