「きたきた捕物帖1(宮部みゆき)」とは
「きたきた捕物帖1」とは著者の宮部みゆきさんが執筆された、16歳文庫売りの主人公が町の事件の解決に奔走する時代ものシリーズです。
宮部みゆきさんといえば現代ものも書かれるミステリー作家ですが、時代ものの作品も大変面白く、今作は新作シリーズになります。ファンの方や時代ものがお好きな方にぜひ読んでほしいです。
今回は「きたきた捕物帖1」について感想を語っていきます!
きたきた捕物帖シリーズについて
ちなみに読む順番や、関連作品などは以下でご紹介しています。
きたきた捕物帖シリーズ(宮部みゆき)の読む順番一覧|ぼんくらファンは必読!
「きたきた捕物帖1」のあらすじと登場人物
あらすじ
宮部みゆき、久々の新シリーズ始動!
謎解き×怪異×人情が味わえて、著者が「生涯、書き続けたい」という捕物帖であり、宮部ワールドの要となるシリーズだ。舞台は江戸深川。いまだ下っ端で、岡っ引きの見習いでしかない北一(16歳)は、亡くなった千吉親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て……。
本書は、ちょっと気弱な主人公・北一が、やがて相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんや周りの人たちの協力を得て、事件や不思議な出来事を解き明かしつつ、成長していく物語。
北一が住んでいるのは、『桜ほうさら』の主人公・笙之介が住んでいた富勘長屋。さらに『完本>初ものがたり』に登場する謎の稲荷寿司屋の正体も明らかになるなど、宮部ファンにとってはたまらない仕掛けが散りばめられているのだ。
今の社会に漂う閉塞感を吹き飛ばしてくれる、痛快で読み応えのある時代ミステリー。
あらすじを簡単に説明すると、主人公の北一が文庫売りをする傍ら、岡っ引きのような真似事をして町の事件を解決する話です。
連作短編で、全4つの物語が収録されています。
きたきた捕物帖は、主人公の北一と後に登場する相棒役の喜多次の「きた」を取ったタイトルです。
1巻目はまだ序章なのでまだ二人の出会い編になるのですが、性格・能力が異なった二人なので読んでいてかなり面白いと思います。
ちなみに、北一が生業としている「文庫売り」とは、本や小間物を入れる箱を売る商売だそうです。
文庫の表に色々な絵や模様が書かれていて、それを楽しむ文化もあって作中では人気を帯びていました。
現代だと本は電子書籍が流行ってきて、そういった作り手の作品をリアルで楽しむ機会が減ったなあと思うと、ちょっと悲しいです。
登場人物
こちらでは主要人物のみ掲載します。
公式HPでは、挿絵も掲載されていますので合わせて御覧ください!絵がかわいいんですよ〜!
公式HP
北一:文庫売りの見習い。16歳
千吉:北一の親分。岡っ引きだったがふぐ毒で亡くなった
松葉:千吉親分のおかみさん。盲目
おみつ:松葉の女中
勘右衛門:通称、富勘。長屋の差配人
青海新兵衛:「欅屋敷」の用人
喜多次:長命湯の釜焚き
「きたきた捕物帖1」の感想(ネタバレあり)
今作はかなり面白かったです!
元々宮部みゆきさんの作品はめちゃくちゃ大好きなんですが、プラス時代ものが好きな私にとってはとても良い作品でした。
以下、全4話の感想を語っていきます。
①ふぐと福笑い
「呪いの福笑い」と呼ばれるもので遊ぶと、関わった人間はその呪いを受け、不幸が起こる。
福富屋で起きた不可解な出来事に、北一と松葉が解決に乗り込む。
物語のスタートは、北一の親分である千吉がふぐの毒で亡くなり、千吉親分の持っていた財産である「文庫屋」や岡っ引きの跡目をどうするかで揉める場面から始まります。
北一は富勘らの取り計らいで、今までどおり文庫売りの棒振りをやらせてもらえるようになりました。
ある日、富勘から相談ごとがあり、なんでも福富屋の遠縁の材木屋で伝えられている「呪いの福笑い」というものがあって、それを遊んだせいで福富屋の人たちが祟られたかのようなことが立て続けに起こりました。
その話を聞いたおかみさん(松葉)は呪いを解きに福富屋さんに向かいました。
この話は最後まで読んで、夢か真かどっちかわからなくなったのが印象的でした。
今でこそ考えれば、ただの偶然に重なった事故だろうと思うのが普通ですが、当時の人にとっては「呪いの福笑い」などといった話を簡単に信じる人がいたんだなと思うと面白かったです。
むしろ信じたものが救われるかもしれませんが…。見事騒ぎを収めたおかみさんはかっこよかったです!
②双六神隠し
ある時、子どもたちが落ちていた双六で遊んでいたら、子供の一人が神隠しにあった。
なんでもその双六にはきな臭い言葉が書かれていて…
この話は二番目に面白かったです!
子供が拾った双六には、止まるべきところに「腫れ物」、「金一両」、「大熱」、「目病み」、「突き当たり」、「金三両」、「金五両」などとマス目に書いてありました。
なんともきな臭い双六で、私だったら怖すぎてやりたくないです。
最初は普通に信じてしまったのですが、北一がまあ鋭いことです。
子供のホラ話だと考えていて、お金が絡んでいるから裏には大人がいると睨んでいました。
北一すごいなと思うと同時に、鋭すぎて岡っ引きの素質がこの頃から芽生えていたのだと思うと頼もしい限りです。
最終的になんとも悲しい裏話が明かされましたが、こういうリアルさがにじみ出る人間の物語を書くのが、宮部さん本当に上手いなあといつも思います。言うなれば、物語にきちんと層(レイヤー)が感じられるのがすごく良いです。
③だんまり用心棒
とある男女の揉め事を富勘さんが解決したら、男側に恨まれて攫われてしまった。
北一は手がかりを探して町のあちこちを調べ、別の事件で関係ありそうな、喜多次という同じくらいの男と出会う。
記念すべき後の相棒となる?喜多次(きたじ)の初登場回です!
1,2話でタイトル回収ができていなかったのでどういう意味かな〜とおもっていたのですが、ようやく意味がわかった話でもあります。
最初の男女の揉め事は、男側がゲス野郎だったのですがその後富勘さんが攫われて、身代金を要求されます。
北一は心配でしょうがなかったのですが、おかみさんに大人しくしてろと注意されます。
すると別件で出会った喜多次から、富勘さんの囚われている場所がわかったと教えてくれ、二人で救出しにいきます。
いやーこの喜多次が読めば読むほど謎が深まる男で、謎に体術が強いし、頭は回るしで非常に興味をそそられるキャラクターでした。
個人的にめちゃくちゃ良かったのが、北一が今回の事件を自分の手柄にしなかったところです。
喜多次に言われて了承するかなと思ったところ、きっぱり断っていたので正々堂々としたすごく良いキャラクターだなと思いました。いつの時代も主人公はそうであってほしい。
しかし右肩に烏天狗の彫り物をしている一族って、どういう一族何でしょうか?
④冥土の花嫁
いわい屋の万太郎が婚儀を挙げようとした当日に、亡き妻の生まれ変わりだと言う女が現れた。
きな臭いとおかみさんと北一は調べ始めるのだが…
おそらく4話が一番ミステリー要素があって、一番面白かった話でした。
亡き妻の生まれ変わりだという女が現れるって一体どんなホラーだと思ったんですが、元夫の万太郎はそれを泣きながら受け入れるという、さらにホラーな展開でした。
今の時代だと頭が狂ってるんじゃないかと言われそうですが、当人たちは婚約者と破局してその生まれ変わりと結婚する寸前までいきます。
せっかく北一がいちから文庫を作って祝言に間に合わせたのに…と悲しい気持ちになりましたが、彼らが水面下で調査を始めると何やらきな臭い話が出てきました。(いい話にはきな臭い話がつきものです)
まさかの祟りと偽装して連続殺人が起き、事態は急展開を迎えたのですが、最終的に金が絡んだ話が犯人の動機でした。
怖すぎて地味に鳥肌がたった事件なんですが、裏で喜多次が暗躍していてちょっと面白かったです。
この話は宮部さんの別シリーズである百物語にちょっと雰囲気が似てて、人間って恐ろしい生き物だな・・・となりました。さすがです。
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それにしても、今のところ北一が表、喜多次が裏、という立ち位置のような気がするのですが、果たして二人でタッグを組んでおおっぴらに活躍する時はくるのでしょうか・・・。喜多次がずっと暗躍する係だと少しさみしいです。日の目を見ますように・・・
まとめ
宮部さんが新しく始めた新シリーズ、先が気になる面白いシリーズになりそうでワクワクしています。
公式HPでも掲載されていますが、宮部さんのインタビューが興味深いので、読まれた方はぜひ見てみてください!
個人的にお声がかわいいな〜と思いながら癒やされていました。それでは。
宮部さんの他の作品はこちら。
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