「カササギ殺人事件」(アンソニー・ホロヴィッツ)とは
「カササギ殺人事件」とは、著者のアンソニー・ホロヴィッツが執筆した、翻訳ミステリー小説です。しかも日本で7冠も賞を受賞している話題作です。(2019年本屋大賞〈翻訳小説部門〉など)
元々著者のアンソニー・ホロヴィッツは、ドラマ「名探偵ポアロ」のドラマ脚本、「女王陛下の少年スパイ! アレックス シリーズ」を手がける超有名人です。
今回は「カササギ殺人事件」の感想について語っていきたいと思います!
「カササギ殺人事件」シリーズについて
「カササギ殺人事件」シリーズの読む順番については以下でご紹介しています。また、その他の作品も解説していますので、併せてチェックしてみてください!
カササギ殺人事件シリーズ(アンソニーホロヴィッツ)の読む順番一覧|未完結
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ(アンソニーホロヴィッツ)の読む順番一覧|未完結
「カササギ殺人事件」のあらすじ・登場人物一覧
あらすじ
名探偵アティカス・ピュント・シリーズ最新刊『カササギ殺人事件』の原稿を読み進めた編集者のわたしは激怒する。
こんなに腹立たしいことってある? 著者は何を考えているの?著者に連絡がとれずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想だにしない事態だった――。
クラシカルな犯人当てミステリと英国の出版業界ミステリが交錯し、とてつもない仕掛けが炸裂する! 夢中になって読むこと間違いなし、これぞミステリの面白さの原点!
簡単にあらすじをご紹介すると、上巻の冒頭は、「カササギ殺人事件」の編集者スーザンの後日談から始まります。
そこで彼女は、作中の物語である「カササギ殺人事件」を書いた著者アラン・コンウェイはろくでなしだ、と言っています。
一体どういうことなのでしょうか?
読者は頭がハテナになった状態で、続きを読むと、実際に「カササギ殺人事件」の物語が始まります。
上巻は名探偵アティカス・ピュントシリーズの最新作「カササギ殺人事件」の物語(創作)で、下巻は担当編集者の視点(現代)に戻り、現実で起こる事件について語られていく流れです。
つまり、二つの事件のダブル・フーダニット(二つのWho done it?)がテーマとなっている作品です。豪華すぎます。
これが隅から隅までかなり緻密にできていている作品で、読み応えが抜群です。
登場人物
まずは、創作軸の「カササギ殺人事件」の登場人物です。(上巻)
・アティカス・ピュント:名探偵
・ジェイムズ・フレイザー:アティカスのジョシュ兼個人秘書
・サー・マグナス・パイ:準男爵。故人
・レディ・フランシス・パイ:マグナスの妻
・フレデリック(フレディ)・パイ:マグナスとフランシスの息子
・クラリッサ・パイ:マグナスの双子の妹
・ジャック・ダートフォード:フランシスの愛人
・メアリ・エリザベス・ブラキストン:パイ屋敷の家政婦。故人
・マシュー・ブラキストン:メアリのかつての夫
・ロバート・ブラキストン:メアリの長男。自動車修理工場勤務
・トム・ブラキストン:メアリの次男。故人
・ネヴィル・ジェイ・ブレント:パイ屋敷の庭園管理人
・ロビン・オズボーン:牧師
・ヘンリエッタ(ヘン)・オズボーン:ロビンの妻
・エミリア・レッドウィング:医師
・アーサー・レッドウィング:エミリアの夫。画家
・エドガー・レナード:エミリアの父
・ジョージー(ジョイ)・サンダーリング:ロバートの婚約者。エミリアの診療所に勤務
・ジョニー・ホワイトヘッド:骨董屋
・ジェマ・ホワイトヘッド:ジョニーの妻
・レイモンド・チャブ:バース警察刑事課の警部補
次に、現実軸での登場人物です。(下巻)
・スーザン・ライランド:クローヴァーリーフ・ブックス文芸部門の編集者
・アンドレアス・パタキス:スーザンの恋人
・ケイティ:スーザンの妹
・チャールズ・クローヴァー:クローヴァーリーフ・ブックスのCEO
・ジェマイマ・ハンフリーズ:チャールズの秘書
・アラン・コンウェイ:作家。故人
・メリッサ・コンウェイ:アランの元妻
・フレデリック・コンウェイ:アランの息子
・クレア・ジェンキンズ:アランの姉
・ジェイムズ・テイラー:アランの恋人
・マーク・レドモンド:映像関係のプロデューサー
・ジョン・ホワイト:ヘッジ・ファンド・マネージャー
・トム・ロブスン:牧師
・ドナルド・リー:ウェイター
・リチャード・ロック:警視
・サジッド・カーン:弁護士
「カササギ殺人事件」の感想(少々ネタバレ)
間違いなく、面白かったです!
元々別作「ホロヴィッツ&ホーソーン」シリーズを読んでいたのですが、それ以上に良作でした。(こちらのシリーズは探偵役が好み)
一番良かった理由は、「ダブル・フーダニット」という入れ子構造が贅沢で非常に面白かったところです。結構ミステリー小説読んでるほうなんですが、初めて読んだ構成でした。
また、ところどころアガサ・クリスティー作品のネタが仕込まれていて、クリスティーファンの私としては「あ、このネタはマープルだ!」というようなネタ探しが面白かったです。
満足した要点をまとめると、以下になります。
・アガサ・クリスティー作品のオマージュとして完成度高すぎる
・ダブル・フーダニットが豪華すぎる
それでは詳しく語っていきます。
アガサ・クリスティー作品のオマージュが上手すぎる
まず冒頭から始まる「カササギ殺人事件」ですが、もう完全に舞台がアガサ・クリスティ作品に登場する村にそっくりです!
牧師館やパブ、雑貨店、医師、村一番の貴族の館など、まるでマープルシリーズに出てくる村となんら代わらない舞台設定です。
そして登場するキャラクターもお決まりの役割で、まるでクリスティー作品を読んでいるかのようでした。
個人的に下巻の現実軸よりも、この「カササギ殺人事件」の作風がめちゃくちゃ面白かったので、一番楽しみました。
この物語に仕込まれているネタは、下巻で編集者のスーザンが解説しているためここでは紹介しませんが、キャラクターごとに視点が入れ替わり怪しさの種を撒くところはまさにクリスティー作品そのものでした。いやーここまでオマージュできるのすごいですね。
ただ一個だけ気になるのは、やはり人物描写についてはアガサ・クリスティーのほうがお上手です。心理描写はリアルですし、そこにページ数を割くのはクリスティーならではだなと改めて思いました。
ダブル・フーダニットについて
物語が二転三転する作品はいくつかありますが、この作品ほど上手くやってのけた作品はないというほど、物語の構成がよくできていました。
フーダニット(Who done it?)は「犯人は誰か?という」問いですが、以下の二つです。
フーダニット①:作中の物語「カササギ殺人事件」での、準男爵サー・マグナス・パイを殺害した犯人は?
フーダニット②:現実で起こった「カササギ殺人事件」の著者アラン・コンウェイを殺害した犯人は?
これがよくできていて、被害者はどちらも「館の主」です。どちらの犯人も予想だにしない人物でした。全くわからなかったです。
一番びっくりしたのは作中の物語である「アティカス・ピュントシリーズ」の中にアナグラムが隠してあったことです。
タイトルだけじゃなく登場人物の名前まで!著者は絶対凝り性だと思います。
インタビュー記事を読んだら、これらのアナグラムはどうやら作家自身が考えたようです。頭良すぎです。
しかも、翻訳も素晴らしくて、タイトルの付け方がまさしく秀逸でした。これは翻訳家さんも優勝ものです。
読み進めていくと、このアナグラムは犯人の動機となっていることが明かされます。
このアナグラム、ぶっちゃけ最悪なんですが、一体どんだけアラン・コンウェイは捻くれた人間なんでしょうか。
冒頭で、スーザンが「アラン・コンウェイはろくでなし」と言っていた理由がわかります。
アランにも犯人にも同情の余地はないのですが、最後に探偵役のスーザンが「私が殺人側のほうがよかった」ということを話していて、非常に皮肉が効いていました。
まとめ
さて、久しぶりにミステリ作品を読みましたが、良質なものを読むと満足感がマックスになるので気持ちがいいです。
読む前に広告文で煽られて期待値が上がり、結局がっかりすることが最近の作品は多いのですが、今作は全く裏切られませんでした。
読み終わった今でも作品全てを理解できているかわからないので、もう一度読み返したいなと思いました。
ぜひ読んでみてください!