「君のクイズ」(小川哲)とは
「君のクイズ」とは著者の小川哲さんが2022年に執筆した、クイズプレイヤーをテーマにした小説です。
ちなみに、別に殺人事件とか起こるような種類ではないので、初心者の方でも楽しく読めると思います。
今回は「君のクイズ」について感想を語っていきたいと思います!
「君のクイズ」のあらすじと登場人物
あらすじ
『Q-1グランプリ』決勝戦。クイズプレーヤー三島玲央は、対戦相手・本庄の不可解な正答をいぶかしむ。彼はなぜ正答できたのか?
真相解明のため彼について調べ決勝を1問ずつ振り返る三島は──。一気読み必至! 鬼才の放つ唯一無二のクイズ小説。
先ほど言いましたが、今回のテーマはクイズです。
クイズ番組で賞金1000万円をかけ、次の一問を正解するか否かのギリギリの場面で、やらせとも思われるような脅威的な解答をした対戦者がいました。
それはクイズの問いを一文字も発されない状態で、対戦者の本庄は解答したのです。結果、正解となり優勝者は本庄絆となりました。
どうして解答できたのか?
このクイズ番組は”やらせ”なのか?
その謎に本庄絆の対戦相手だった三島は推理していく、という物語です。
登場人物
・三島玲央(みしま れお):クイズプレイヤー。クイズが大好き。社会人
・本庄絆(ほんじょう きずな):クイズプレイヤー。イケメン。記憶力はデータベースレベル
・坂田泰時(さかた やすとき):「Q-1グランプリ」のディレクター
「君のクイズ」の感想(少しネタバレあり)
この小説はわずか189ページしかないんですが、それでもよくまとまっていて、上手いなあというのが一番の感想でした。
最後までずっと三島くんの視点で物語は進むのですが、彼の視点がかなり読みやすくて、彼が謎に対してどういう”解答”が登場するのかというワクワク感でいっぱいでした。
本の帯にもありましたが、”読み終わった後、世界がクイズに見える”という感想は非常によくわかります。
以下ちょっとしたネタバレを含みます。読んでいないと理解できないようには書きますが、ご了承ください。
クイズプレイヤーの思考が面白い
クイズをテーマにした小説ってなかなか読んだことないと思います。
特に今作はクイズプレイヤーの三島くんを視点としているので、クイズプレイヤーが普段どんなことを考えながら解答しているのか、というクイズプレイヤーの思考が表現されているのが非常に面白かったです。
特に面白かったのは、問題文を予測しながら解答を二、三個に絞りボタンを押す、という話です。
普通の人だと、問題文を全部聞いてから解答を考えると思いますが、クイズプレイヤーは素早く仮説を立てながらクイズに取り組むので、自然とボタンを押すのが早くなるのだそうです。
もちろん雑学の勉強も必要でしょうが、ただ勉強をするんじゃなくて勉強する”方法”も独特なのが、クイズプレイヤーのスキルの一つなんだろうなと思いました。
最後のエンディングが好き
思えば伏線は最初から張られていました。
冒頭は『Q-1グランプリ』決勝戦の話で登場した二つの問題。
最後の問題の一つ前の問題、「仏教において極楽浄土における〜」や、最後の問題である「『ビューティフル、ビューティフル、ビューティフル』〜」は、後々もう一度登場します。
その後、主人公の三島くんが本庄くんを調べるために過去のクイズ大会も調査するとき、いろいろなクイズが出ますがそれも全て伏線でした。
たしかに途中までクイズがちょっと限定的すぎるし、三島くんが面白いほどクイズに対するエピソードを持ち過ぎている、という違和感はありました。
ですが、最後読んだ時はまさかそんなタネがあったとは知らず、驚いたと同時に斬新で面白かったです。
クイズ番組として見せるよりも、スポーツとして見せる。
誠実か否かは別問題として、番組の作り的にはかなり面白かったのではないでしょうか。
三島くんは自分の仕事に対して誇りを持っていたために結構怒ってましたが、私は案外好きな結末だったのでよかったです。
打算的な本庄くんは一番人間らしかったし。
これは余談になりますが、プロデューサーが番組を作る時の発想方法が面白かったことで思い出したんですが、「テスカトリポカ」という作品も仕事の発想が斬新だったなと思い出します。
今回と全く関連しないクライムノベルなんですが、とある日本人元外科医が臓器売買サービスを始めるんですね。
そのサービスがきちんと買い手のインサイトをついてる考えで、思わず納得してしまったという個人的な感想です。もちろん犯罪なので良くはありませんが、考えた著者はすごいなと思いました。
こういった筋道立てて仕事小説を書く作品はやはり面白いですね。
全く関係ない話で恐縮ですが、「テスカトリポカ」も面白い作品でしたのでご興味があればぜひ。
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まとめ
それにしても非常にクセのある物語でした。
噛めば噛むほどいいという感じの小説で、もう一度読み直したらまた違う見方で読めるかもしれません。
ここ最近読んだ国内の作家さんの中で、かなり上位に食い込むくらいの読み心地でしたので、他の作品も読んでみようと思います!
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