「チムニーズ館の秘密」(アガサ・クリスティ)とは
「チムニーズ館の秘密」とは、著者のアガサ・クリスティーが1925年に書いた、冒険ミステリー小説です。
バトル警視シリーズの1巻目にあたる作品なんですが、今作は別の主人公が探偵役として難事件を解決する物語です。
今回は「チムニーズ館の秘密」について感想を語っていこうと思います!
バトル警視シリーズについて
バトル警視シリーズの読む順番については、以下の記事をご覧ください!
バトル警視シリーズ(アガサクリスティ)の読む順番一覧|冷静沈着な警視が解決するミステリー
「チムニーズ館の秘密」のあらすじと登場人物
あらすじ
王政復古で混乱するヘルツォスロヴァキア国。
その石油利権を狙う各国代表が、ロンドン郊外のチムニーズ館に集結していた。秘宝を狙う大泥棒までもが入り乱れる中、ついに殺人が!
事件解決に乗り出したバトル警視以下英米仏の探偵たちは、どんな結末にたどりつくのか?謎が謎を呼ぶ、波乱万丈の冒険ミステリー。
要素がありすぎてあらすじの紹介が中々難しいのですが、メインとしてはチムニーズ館で起きる殺人事件を解決していく物語です。
物語の始まりは、主人公のアンソニーが友人のジェイムズから旅先である依頼を受けます。
それは、指定の出版社にある原稿を届けてほしいというものでした。
依頼料一千ポンドと、謎の原稿に惹かれて依頼を受けるアンソニーですが、出版社に届ける前に色々な刺客に狙われてしまうことになります。
一方その頃、チムニーズ館の所有者であるケイタラム卿は、外務省のジョージからある原稿の問題について話を聞いてました。
なんでも、アンソニーが運ぼうとしている原稿には、ヘルツォスロヴァキア国の重大な情報が載っているかもしれない、という問題があったのです。
ちょうどヘルツォスロヴァキア国では、ミカエル王子を担ぎあげて復興させようとしていました。
そこで、王家の立場が揺るぐかもしれない原稿を放っておくわけにはいかなく、ジョージはその原稿を渡してもらうように画策していました。
これ以外にもいろいろな陰謀が裏で入り乱れる中、ケイタラム卿が所有するチムニーズ館で殺人事件が起こります。
その殺人事件が起きる時に場に居合わせてしまったアンソニーは容疑者として疑われてしまいます。
自分の無実を証明するために、バトル刑事と一緒に事件を調査していく、という流れです。
登場人物(ネタバレあり)
アンソニー・ケイド:キャッスル旅行者の旅行案内
ジェイムズ・マグラス:ケイドの友人
ケイタラム卿:チムニーズ館の所有者
アイリーン(バンドル):ケイタラム卿の娘
トレドウェル:ケイタラム家の執事
ブラン:ケイタラム家の家庭教師
スティルプティッチ伯爵:ヘルツォスロヴァキアの元首相
ミカエル・オボロヴィッチ:ヘルツォスロヴァキアの王子
ボリス・アンチューコフ:ミカエル王子の付き人
アンドラーシ大尉:ミカエル王子の侍従武官
ロロプレッティジル男爵:ヘルツォスロヴァキアの王政擁護派の代表
ジョージ・ロマックス:イギリス外務省の高官
ヴァージニア・レヴェル:ロマックスのいとこ
ビル・エヴァズレー:ロマックスの秘書
ハーマン・アイザックスタイン:全英シンジケートの代表
ハイラム・P・フィッシュ:チムニーズ館の客
キング・ヴィクター:フランスの宝石泥棒
ジュゼッペ・マネリ:ロンドンのホテルのウエイター
バトル:ロンドン警視庁の警視
ルモワーヌ:パリ警視庁の刑事
「チムニーズ館の秘密」の感想(一部ネタバレあり)
かなり読み応えある作品でした。
実は2回ほど読んでいるのですが、個人的には「茶色の服の男」の次に面白かったです!
次々といろんな伏線が出てくるのですが、物語の展開が読めなくていい意味で振り回された小説でした。さすが女史!
そもそもどんな事件だったのか?
あらすじでもご紹介しましたが、メインの事件はチムニーズ館で起きる殺人事件です。
殺されたのは、ヘルツォスロヴァキア国のミカエル王子。
事件の渦中にいた王子がまさか殺されるなんて驚きの展開ですが、犯人と犯行動機が不明のまま物語は進みます。
容疑者に挙げられたのは、身分が保証されていない主人公のアンソニー。
なぜなら、死体現場では中央の窓が空いていたため、状況証拠的に外部の犯行に見えたからです。
そこでアンソニーは自分が持っていた手札をきります。
・原稿を出版社に届けように依頼したこと
・原稿を狙ってきた人から紙切れを奪って、そのとおりにチムニーズ館にきたこと
ここでアンソニーは、ミカエル王子が殺される前にヴァージニアの家で別の殺人事件が起こっていたことを秘密にしました。
という感じで、アンソニーも警察も他の容疑者も、お互いが少しずつ真実を隠した状態で事件の調査が始まるので、ここらへんがかなり面白かったです!
事件を取り巻く謎としては、いくつかあります。
・ヘルツォスロヴァキア国を暴露した原稿→誰かに盗まれる
・アンソニーが持っていた女性が脅されている手紙→誰かに盗まれる
・ヴァージニア家にあった男の死体→アンソニーが移動して、警察に発見される
・チムニーズ館に存在する宝石はどこか→宝石泥棒が狙ってると思われる
これらの謎は全て、最後に明かされることになります。
ただの原稿を運ぶだけの仕事だったはずが、大きな事件へと発展していく物語の展開は、さすがクリスティ節といったところです。
ミステリーとしてはちょっと物足りない点がいくつかありましたが、それでも一気に読めたので満足です。
主人公アンソニーが魅力的
この作品はなんといってもアンソニーのキャラクターが一際よかったです!
行動力はあるし、冷静沈着で頭が回るタイプなので、事件がスムーズに進み非常に面白く読めました。
この作品を読む前に、バトル警視が登場する「ひらいたトランプ」(ポアロシリーズ13巻)を既に読んでてキャラクターを知っていたので、解決できるのか?と疑問でした。
ただフタを開けてみたら、バトル警視ではなくアンソニーが探偵役だったのでちょっと笑ってしまいました。逆に彼でよかったです。
残念ながら最後の展開でアンソニーが探偵役をやる作品はなさそうですが、最後にロマンスを放り込んでくるあたり、クリスティはロマンスが好きなんだろうなと思いました。
冒険といえばロマンスは必要でしょ!てきな。
個人的にヴァージニアの魅力がいまいち伝わらなかったので、そこだけが微妙でした。
まとめ
最後までたくさんの秘密が詰まった物語でしたが、非常に読み応えのある作品でした。
ぜひこれを気に入った方は、「茶色の服の男」も読んでいただきたいです!
この作品も、冒険ものなのでワクワクすること間違いなしです。
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