「闇の牢獄」(ダヴィド・ラーゲルクランツ)とは
「闇の牢獄」とは、著者のダヴィド・ラーゲルクランツが2023年に書いた、心理学者のレッケ&警官のミカエラのタッグが難事件を解決していく警察小説です。
著者のラーゲルクランツは、ミレニアムシリーズの4〜6巻まで担当した方として有名な方です。(1~3巻まで書いた方が亡くなってしまったため)
レッケ&バルガスシリーズとしては三部作予定です。
今回は「闇の牢獄」について感想を語っていこうと思います!
ミレニアムシリーズについてはこちらでご紹介しています。
小説ミレニアムシリーズの読む順番一覧(完結済み)|シリーズ再始動!
「闇の牢獄」のあらすじと登場人物
あらすじ
『ミレニアム』を書き継いだ著者によるバディシリーズ。北欧ミステリ新境地
ストックホルムで起きた、サッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは捜査に参加、尋問のスペシャリストで心理学者のハンス・レッケと出会う。彼は鎮痛剤の依存症だった。
独特の心理分析で捜査陣をかく乱するレッケだったが、ある日ミカエラが地下鉄に飛びこもうとした彼を救ったことをきっかけに、二人は被害者の裏の顔と、事件の奥に潜む外交機密に突き当たる。元ピアニストの経歴を持つレッケは、アフガニスタン移民である被害者の中に音楽の痕跡を見つけるが、そこには凄惨な過去が待ち構えていた。
上流階級のレッケと移民のミカエラ。奇妙なコンビは時と国境を越え、真実に迫る――。
今回はバディもので、前半戦は警官のミカエラと心理学者のレッケの二人の出会いから始まります。
きっかけは、とあるサッカー審判員の撲殺事件です。
事件を調査していたミカエラのチームは、意見を求めにレッケの自宅に訪れます。
彼は一目見ただけで人間の性格や特徴、趣味などを当ててしまう人間でした。(まさにホームズみたいに!)
事件に対しても根本からひっくり返るような意見を言われたので、警察側は受け入れられずに彼の元を去ります。
しかしミカエラは調査していくうちに気になることが出てきて、もう一度レッケにコンタクトをとろうとするのですが、一向に繋がらなくなりました。
そんなある日、ミカエラはパーティの帰りに駅のホームで自殺しようとする男を助けます。それが、レッケでした。
ミカエラは以前会った時とは打って変わって弱りきったレッケの姿を見て幻滅します。
しかしミカエラはレッケから事件についての衝撃の事実を知ってしまい、事件に対しての見方が変わってきて・・・
登場人物(ネタバレあり)
ミカエラ・バルガス:ソルナ警察署の警官
ルーカス・バルガス:ミカエラの1番上の兄
シモン・バルガス:ミカエラの2番目の兄
ヴァネッサ:ミカエラの友人
ハンス・レッケ:心理学者
ロヴィーサ・レッケ:ハンスの妻
ユーリア・レッケ:ハンスとロヴィーサの娘
マグヌス・レッケ:ハンスの兄
シグリッド・ハンソン夫人:ハンスの世話人
カール・フランソン:主任警部
ヨーナス・ベイエル:警部補
ラッセ・サンドベリ:警部補
マッティン・ファルケグレン:警視監
マッツ・クレーペリエル:外務大臣
ジャマル・カビール:殺害されたサッカー審判員
ジュゼッペ(ペッペ)・コスタ:カビール殺害の容疑者
マリオ・コスタ:ジュゼッペの息子、サッカー選手
トーヴェ・レーマン:テレビリポーター
チャールズ・ブルックナー:CIA局員
エマ・グルワル:クラリネット奏者
ヴィクトル・マリコフ:モスクワ在住の音楽家
サーシャ・ベリンスキー:指揮者、ヴァイオリンの指導者
ラティーファ・サルワニ:ヴァイオリニスト
ダルマン・ディラーニ:ケルン在住のヴァイオリニスト
エレナ・ドルゴフ:音楽学校の経営者
ムッラー・ザカリア:タリバンの幹部
「闇の牢獄」の感想(一部ネタバレあり)
個人的に、レッケとミカエラのタッグがドストライクでとても面白かったです!
ただ視点が固定ではなく、いろんなキャラクターの視点に切り替わっていくので人によってはちょっと読みにくく感じるかもしれません。
事件としてはかなり様子が変わるタイプの話なんですが、視点が切り替わる上に淡々とした雰囲気なので、テンションは一定です。
北欧ならではの作風でも、あまり凄惨な描写がないのでグロ苦手な方でも読みやすいかなと思いました。
以下詳細に語ります。(犯人などのネタバレなしです)
どういった事件だったのか?
今回の事件は、サッカーの審判員が殴殺されるというものでした。
被害者はカビールという男性で、殺される前に試合中にペッペという男性と揉めていたこともあり、ペッペが容疑者となっていました。
ミカエラ含める警察側の見解ではペッペが犯人となりかけましたが、そこにレッケという心理学者の意見を聞いたところペッペは犯人ではないという見解でした。
ただし警察側は受け入れられなかったので、そのままペッペが容疑者として進んでいました。
その後、ミカエラがもう一度レッケから話を聞いた時、被害者のカビールについて衝撃的な事実が発覚します。
詳細は読んでいただきたいのですが、カビールは元々テロリストの一味で、CIAの管轄に置かれていたことがわかります。
CIAの諸事情により、カビールについて深掘りさせないために、事件をペッペ容疑者で収束させようという魂胆がありました。
裏事情をレッケは知ってた上でミカエラたちに隠していた、という話でした。
その後、ミカエラとレッケは真犯人を探すために独自に調査を始めます。
一見、単純な殺人事件と思いきや、話が大きく発展していってかなり後半はかなり面白かったです。
CIAの拷問の話は本当のことなのかわかりませんが、恐ろしかったです。
著者からのサービスかもしれませんが、最後に事件と関連があるカビールの過去が描かれていたのがとても良かったです。
心理学者レッケの魅力
貴族階級出身の心理学者のレッケが今作における探偵役です。
彼のキャラクターは非常に魅力的で、かのシャーロック・ホームズを思わせるような観察眼の持ち主でもあります。
彼の思考過程は詳細に語ることはなく、パッと確信的な事実に至ってしまうので、ちょっとしたマジックみたいに見えます。
ホームズに似てると言いましたが、もう一つ似てる特徴として薬物中毒です。
ホームズは麻薬のほうなのでちょっと違いますが、レッケは双極性障害を患っていて、気分が乗らなければ薬を飲むといった薬物中毒になっています。
実際に作中で、レッケが電車のホームから飛び降りようとした時に居合わせたミカエラは、彼を助けた後に家まで連れて行きますが、そこではレッケが大量の薬を飲んでいたシーンが描かれていました。
個人的にこのシーンは衝撃的で、一番最初に登場した堂々としたレッケとは異なり、誰…?となるほどでした。
この後も大丈夫かこいつという心配になるほど、病み具合のレッケが描写されます。
こんな感じで、優れた頭脳と観察眼の持ち主なのにどうしようもない人物だったことが明らかになるのですが、この設定がキャラクターとしての魅力を高めている気がします。個人的にはめちゃくちゃ好きです。
しかも元はピアニストだったらしく、音楽の設定もホームズと似てて面白かったです。
レッケとミカエラのタッグ
病みまくっているレッケの相棒は、女警官であるミカエラです。
彼女もキャラクターとして非常に魅力的で、なんといっても意志の強さが彼女の素晴らしい特徴です。
ミカエラにもちょっとした家族の問題と、自分の自己評価の低さなど拗れた背景があるのですが、それも彼女の魅力的なところだと思います。
作中で印象的だったのが、レッケが兄のマヌグスに対して、ミカエラを表現したセリフです。
「どちらかといえば、僕のウェルギリウス。僕のサンチョ・パンサだ。…」
※ウェルギリウス:ローマの三大詩人の一人。
※サンチョ・パンサ:「ドン・キホーテ」に登場する、ドン・キホーテの従士。
例えとして高尚すぎてあまりピンとこなかったのですが、ようは自分を導いてくれる相棒みたいなニュアンスなのかなと思いました。
また、作中ではレッケがミカエラに対して尊敬と慈愛を持ち始めている描写がいくつかありました。頭を撫でようとして、引っ込めたことも。
二人は出会ったばかりなので今後どうなるかはわかりませんが、形容し難い関係というのが表現されていて、そこがとても魅力的でした。
個人的にはくっついてお互いにいい影響を与えていく感じになると嬉しいです。
まとめ
総合的には満足した作品でしたが、もう少し事件の緩急がつけられた面白かったのかなあと思います。
結構悩みながら書いたような印象を受けました。(個人の感想)
最後に、事件が解決した後もミカエラがレッケの家に度々滞在してることがちょっと可愛いかったです。やっぱりくっついてほしいな・・・
次作に繋がる依頼人も登場していたので、次回作も必ず読みたいと思います!
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