「クリストファーの魔法の旅」(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)とは
「クリストファーの魔法の旅」とは、1977年に著者のダイアナ・ウィン・ジョーンズが執筆した英ファンタジー児童小説です。
大魔法使いクレストマンシーというシリーズの2作目にあたる作品で、クリストファー少年の魔法の旅を描いていています。
今回は「クリストファーの魔法の旅」の感想を語っていきたいと思います!
ちなみに著者ダイアナさんの代表作品「ハウルの動く城」シリーズについては以下でご紹介しております!
“ハウルの動く城”原作小説シリーズの読む順番一覧|ハウルとソフィーの続編小説あり
「クリストファーの魔法の旅」のあらすじと登場人物
あらすじ
クリストファーは幼いころから不思議な夢を見ていた。
岩場を抜けてさまざまな谷におりていくと、谷ごとにちがう世界がある、という夢。クリストファーが別世界へ旅することのできる強い魔力を持っている、と気づいた伯父の魔術師ラルフは、クリストファーをだまして、利用しはじめる。
でも、目覚めているときのクリストファーは、いっこうに魔法が使えなかった。心配したお父さんに、探知能力者ポーソン博士のところへつれていかれたクリストファーは、意外なことを聞かされる。おまえは命が九つある特別な大魔法使いで、次代のクレストマンシーになる身なのだ、と…。
だが、老クレストマンシー・ゲイブリエルの城に引き取られたクリストファーは、孤独だった。
唯一心を許せるのは、別世界で出会った、やはり強い魔力を持つ少女「女神」と、ラルフ伯父の使いだという謎の青年タクロイだけ。やがてラルフの悪事が露見し、城は悪の軍勢の攻撃を受けることに…?
「魔法のファンタジーを描かせたら第一人者」「ファンタジーの女王」と評価の高い、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの代表連作「大魔法使いクレストマンシー」の一作。クレストマンシーの少年時代を、生き生きと描く。
今回の物語は、他の作品で大魔法使いクレストマンシーとして活躍する主人公のクリストファーが、クレストマンシーになるまでの幼少期を描いています。
良い血筋の父と母の元に育ったクリストファーはいろんなところを冒険する夢を度々見ます。
例えば建物の地下室から脱出するのを手伝ってもらったり、ニコニコ笑う魚のヒレを持った女性たちからネックレスをもらったり。
ある日、冒険から持ち帰った様々なものを伯父のラルフに伝えた日から、伯父さんから奇妙な実験を始めました。
それは、伯父さんの知り合いと一緒にいろんな場所へ荷物を取りに行く仕事です。クリストファーは伯父さんが好きでしたので、毎週いろんな世界に行きます。
その仕事の傍ら、クリストファーが寄宿学校に行くことになり、授業中に大事件が起こってそこで彼に9つの命があることが発覚しました。
というような物語でこの後もどんどん展開が変わっていくのですが、最後まで目が離せない読み応えの抜群の作品です!
登場人物
クリストファー・チャント:主人公。9つの命を持ち、大魔法使いの素質を持つ。銀に弱い。
お父さん:クリストファーの父。厳格だがクリストファーを愛してる。
お母さん:クリストファーの母。美人だが社交界のヒエラルキーを大事にしている。
ラルフ伯父:母の兄。葉巻を吸っていて、キツネ色のツイードの服を着ている。魅力がある。
ミス・ベル:クリストファーの最後の家庭教師。時々美しさが垣間見える。
タクロイ:クリストファーと一緒に仕事をする男性。かっこいい。
女神:第十系列の「生けるアシェス」
スログモーテン:第十系列の神殿の猫。凶暴。
ポーソン博士:クリストファーの魔法が使えない原因を発見した人。太っていて椅子から降りない人。
ゲイブリエル・ド・ウィット:大魔法使いクレストマンシー。怖い。
フレヴィアン:クリストファーの先生。
「クリストファーの魔法の旅」の感想(ネタバレあり)
今作は大魔法使いクレストマンシー、クリストファーの幼少期の物語ですがテンポがよくてめちゃくちゃ面白かったです。
ダイアナさんの作品って、初めての人は読みにくいと言われているのですが、児童小説なので全く難しい話が一切出てきません。多分読みにくいと言われてるのは、どこで場面切り替えされているかわからないからかなと思います。
でもハマる人にはハマる、大人も子供も楽しいファンタジー世界です。
クリストファーがやんちゃでハラハラする!
この作品の見どころは主人公のクリストファーの成長していく姿です。
彼は小さい頃からチヤホヤされるタイプで、周りに甘やかされて育ってきました。
かなりヤンチャなタイプで、夢で冒険するたびに命を落とします。ですが、9つもあるのですぐに別の命に入れ替わる感じになります。
読んでいてハラハラするのですが、一番ハラハラしたのは大魔法使いクレストマンシーがいる城に居候する場面です。
生まれた時から9つも命を持っている人間は、魔法使いクレストマンシーとクリストファーだけだったので、それだけでクレストマンシーの後継者になります。
その後継者として城に居候することになり、嫌々で行くことになってしまったクリストファーは城にいる人間全てが嫌いになり、ツンケンした態度をとっていました。
これに対して我慢ならなかった教師のフレヴィアンに怒られ、クリストファーは心をいれかえます。
素直に「ごめんなさい」といえるクリストファーは立派ですし、多少やんちゃしても根はいい子なので「そういう時もあるよね、うんうん」という感じに思いました。あとかわいい。
そもそも子供の頃から、クリストファーの母に立派な人になるように散々言われ、行く先も勝手に決められてばかりだったのでそりゃ反抗したくもなると思います。
思えばクリストファーは中々窮屈な環境にいたので、自分の世界を抜け出して夜な夜な他の世界に遊びに行くことが、彼なりの息抜きだったのでしょう。
読者側としては、好き勝手やっているところところはかなり面白かったです。
世界が12個もある!?広大な世界観
この作品は他の作品でも同じ世界観を持っているのですが、中でも面白いのが世界は第1系列〜第12系列まであるという話です。
クリストファーがいる世界は第12系列なんですが、ラルフ伯父さんは彼に依頼して、いろんな世界に言って様々な武器や生物を密輸していました。
ちょっと興味深かかったのが最後らへんでも登場した、第11系列世界です。
ゲイブリエルの魂を回収するためにクリストファー・女神・タクロイが行くのですが、タクロイは第11系列の世界出身でそこの統治者に逆らえない状況でした。
その世界はドライトという強い力を持つ統治者がいて、生まれた時に魂を奪うことでそこにいる人々を支配しており、タクロイも彼に支持されて善悪の両サイドに所属していました。
第11系列世界の常識として、より嘘をついたものが偉く、毛皮など派手な格好をした人が上位の人というルールがあります。(人なのかエルフなのか・・・)
個人的にどこかの国の比喩だと思うのですが、最後にクリストファーにやられるドライトという展開は良かったです。
今回の世界設定ですが、「魔法使いハウル」でも同じ設定が使われています。
ハウルは元々ソフィーたちがいる世界とは別のところからやってきて魔法使いになったので、クリストファーのように世界を行き来できるとは、ハウルはよほど強い魔法使いに間違いありません。
パラレルワールドかもしれませんが、クリストファーがいる物語のどこかにハウルやソイーたちもいるんだなと思ったら面白かったです。
女神の生けるアシェスについて
女神がいた第10系列世界では、アシェス(=神)をあがめる宗教国家ができていました。
しかもアシェスというのは強い魔力を持った子供の女の子が交代制で努めます。
アシェスとリンクした女の子は一年中神殿に閉じ込められ、その後一ヶ月間国民に祈りを捧げるらしいのですが、ある意味アシェスと国の傀儡と言っても間違いないと思います。
ただ、今回の女神はクリストファーと出会うことで、最終的に神殿にも出れて学校にも行けるようになったのは本当に良かったです。
しかし「生けるアシェス」が変わる度にアシェスに命を捧げるのは何だったのでしょう。
女神の世話役、マザー・プラウドフットは女神たちの代わりに猫の命を捧げていましたが、理不尽にもほどがあるなと思いました・・・。(猫の命は9つある設定)
まとめ
今作は大人も子供も楽しめる面白いファンタジー作品でした。
結構すぐに物語の展開が変わるので、今何をしてる場面だ?と疑問に思うことがあるかもしれませんが丁寧に読めば問題ありません。
ハウルにハマった方は絶対に面白いと思ってくださると思います。ぜひご興味あれば読んでみてください!