皇帝のかぎ煙草入れ(ディクスン・カー)のあらすじと感想|クリスティも脱帽した名作ミステリー

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「皇帝のかぎ煙草入れ」/ジョン・ディクスン・カーとは

「皇帝のかぎ煙草入れ」とは、米英のミステリー作家ジョン・ディクスン・カーが書いた名作ミステリー作品です。
「東西ミステリー100」というランキングにも海外編の37位にランクインするほど、日本だけでなく世界中のミステリー愛好家から大絶賛されています。

ちなみに、ジョン・ディクスン・カーといえば「火刑法廷」という作品がとても有名です。

今作は個人的に何度も読んでしまうほどの面白さで、わずか300ページしかないのにも関わらず伏線が上手に張り巡らされており、初めて読む方でも必ず面白い!と思ってもらえる作品です。

今回は「皇帝のかぎ煙草入れ」について紹介しながら、感想を語っていこうと思います。

ジョン・ディクスン・カーの作品について

ジョン・ディクスン・カーの全作品については、まとめてご紹介しています。ぜひ他の作品もチェックしてみてください!


ジョン・ディクスン・カーの作品一覧・シリーズまとめ【米国の密室ミステリー作家】
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「皇帝のかぎ煙草入れ」のあらすじ

あらすじ

向かいの家で、婚約者の父親が殺されるのを寝室の窓から目撃した女性イヴ。

だが、彼女の部屋には前夫が忍び込んでいたので、容疑者にされた彼女は、身の証を立てることができなかった。

絶体絶命、物理的には完全な状況証拠が揃ってしまっているのだ。

「このトリックには、さすがのわたしも脱帽する」とアガサ・クリスティを驚嘆せしめた不朽の本格編。

今作は登場人物も少なく、物語としてシンプルです。

主人公のイヴが寝室にいたら前夫ネッドが忍び込んできて、よりを戻そうと話し合います。(忍び込むって・・・・)
ふとネッドが窓の近くに寄ると、向かいの家で老人が殺されているのをイヴと共に発見します。

後日、イヴの女中の証言やイヴの寝間着についていた証拠などによって、容疑者として挙げられます。
しかし事件が起こった時には前夫のネッドと居たため殺人を行えたはずはないのですが、ネッドと一緒にいたことが婚約者にバレたら怪しく思われるため、身の潔白を証明できずいました。

そこに精神科医のキンロス博士と警察署長のゴロンがやってきて彼女に尋問し始めます。

ざっとこんな感じに話が進んでいくんですが、事件が起こった後76ページまでにヒントがいくつか散りばめられています。
これが最後の推理に活きてくるので、ぜひ読みながら推理することをおすすめします。

ちなみに私は解けませんでした。(やられた・・・)




「皇帝のかぎ煙草入れ」を読んだ感想(少しネタバレあり)

ここからは少しネタバレも含みます。トリックネタバレは避けるつもりなのであしからず。

この作品の凄さポイントは二つあると思います。
・イヴ視点のミスリード
・著者の大胆不敵な伏線とヒント

主人公イヴ視点のミスリード

これはどのミステリー作品でも結構使われる手法だと思うのですが、主人公の視点って「客観的な視点」として書かれることがあまりないんですよね。
一個人の視点なので当たり前と言ったら当たり前なんですが。

主人公のイヴは自立した28歳の女性で、親の資産持ちで上品な方です。
なんでも周りの男性がほっとかないほどの美しい女性らしく、性格はなぜか人間を信じすぎるところがあります。

今回の事件は、彼女の人間を信じすぎる性格がネックになっていて、読者は彼女の視点をそのまま信頼して受け取ってしまいます。
これが上手く利用されて、この次のポイントである「著者の大胆不敵な伏線とヒント」に繋がっていきます。

カーの大胆不敵な伏線とヒント

先程も述べましたとおり、イヴは人を信頼しすぎる性格です。
その設定を上手く使って、著者のカーは何気なくあちこちに伏線とヒントを堂々と置いていました。

最後の謎解きを読んだ人が再読すると、「え、ここに堂々とヒントが書いてある!!」と驚くほど大胆不敵な書き方です。

ぶっちゃけるとタイトルも大ヒントです。読者が気づかないと思ってるのでしょうか。いや、たしかに気づきませんでした。

やられたと思ったのはこの部分でして、今から読む方はぜひ注意深く事件の箇所を読んでみてください。
木を隠すなら森の中、と言いますが非常に上手いです。

探偵役のキンロス博士がかっこいい

また、私が個人的に好きだったのがダーモット・キンロス博士です。
今作しか登場しない名探偵なんですが、犯罪心理学ではイギリス一と言われる精神病医です。

容姿については詳しく書いていませんが、顔の片面はアルラスでうけた爆弾の傷を外科手術で治療しており、気を抜くと動かなくなるらしく度々描写されていました。

とても冷静沈着に分析するんですが、事件でイヴと出会ってちょっと変わっていきます。

イヴを見送ってしばらくイブの家を眺めるシーンだとか、最後のシーンだとか、色々と見どころがありますのでロマンスが好きな方には注目して欲しい部分です。(がっつりロマンスではなく、おまけ程度です)

婚約者と前夫がクズ男

面白いのはミステリーだけでなく、ロマンスも面白いです。
美しいイヴを未だ愛している前夫ネッドと、ゴルフ場でイヴに一目惚れした婚約者のトビイが主人公のイヴを取り合います。

しかしどっちも人間としてダメダメなので、読み進めると段々腹が立ってくると思います。

特にトビイが酷いです。途中で別の女性と浮気してたことがイヴにバレます。バレた時の言い訳が、「男というものは、ときに火遊びが・・・」です。

その前にイヴが容疑者として挙げられた時に、自分の醜聞と前夫ネッドとの関係ばかり気にしてるばかりでイヴのことを思いやった態度を見せなかった後にトビイの浮気が発覚します。

酷いを通り越して阿呆です。
彼の裏の顔も中々ユニーク(ざまあ系)ですので、ぜひ楽しんでください。




まとめ

ジョン・ディクスン・カーの作品の中では、怪奇性がなくエンタメっぽくない、そして正統派のミステリー小説だと思います。

その他の代表作といえば「火刑法廷」ですが、ぜひそちらも比べて読んでみてください。全く系統が異なって、同じ著者が書いたのか?と思うかもしれません。

しかし、キンロス博士が相当気に入ったので他の作品も読みたかったのですが、今作だけ登場みたいで残念です。イヴ嬢といちゃいちゃしてたのみたかったな・・なんてふと思いました。それでは。

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