復讐の女神(アガサ・クリスティ)とは
「復讐の女神」とは、著者のアガサ・クリスティーが書いた名探偵マープルシリーズの11巻目に当たるミステリー小説です。
今作も非常に読み応えがあり、個人的にとても面白かった作品です。
この作品は「カリブ海の秘密」の続編でして、実はこの後にもう一作品続く予定だったのですが、出版されずに幻の作品となりました。
今回は「復讐の女神」について感想を語っていこうと思います!
ミス・マープルシリーズの読む順番について
こちらのシリーズについては以下で解説しています。ご興味ある方はぜひ御覧ください!
【決定版】ミスマープルシリーズ(アガサクリスティ)の読む順番一覧|完結済み
アガサ・クリスティのおすすめ作品については以下でご紹介しています。
【全世界】アガサクリスティのおすすめランキングTOP22|初心者も読みやすい隠れ名作もご紹介
復讐の女神(アガサ・クリスティ)のあらすじ
あらすじ
マープルは、かつてともに事件を解決した富豪の死を知る。
その一週間後、「ある犯罪調査をしてほしい」と富豪が記した手紙が届く。だが、具体的な犯罪の内容については何も書かれていなかった。
マープルは手紙の指示通り旅に出るが、そこには様々な思惑をもつ人々が待ちかまえていた。『カリブ海の秘密』の続篇。
先程も言いましたが、こちらの作品はシリーズ9巻目「カリブ海の秘密」で共闘したラフィール氏からスタートする話です。
ホテルでの事件でマープルをとても気に入った大金持ちのラフィール氏は、ある日謎の依頼をもちかけます。
その依頼内容は一切明かされず「一体どういう事柄をマープルに解決してほしいのかを自分でそこまで辿りついてほしい」とのことでした。
困ったマープルですが、ラフィール氏が報酬として支払い金額が魅力的に思い、つい引き受けてしまいます。
果たしてマープルは謎解きをすることができるのでしょうか?
ミステリー好きとしては堪らない、謎が謎を呼ぶ物語のスタートで、最高に読み応えがある作品となっています。
実写ドラマもある
ちなみにこの作品はBBC(イギリスの放送局)でドラマ化もされています。
個人的に見応えがあって面白かったので、気になる方は観てみてください!
今回はシーズン2の7、8話になります。
配信されている動画サービス
※各リンクをクリックすると、直接「マープル」の動画ページに飛びます。
基本的にどこの配信サイトも30日間は無料なので、お試しで入ってみてもいいかもしれません。
ちなみに私はアマゾンプライムに入ってるので、そちらで見ました。
復讐の女神(アガサ・クリスティ)の感想(ネタバレあり)
今作はミステリーとしても物語としても、非常に面白い作品です。
ただ、個人的にミステリーの完成度は「予告殺人」が一番で、今回の作品は物語として面白い作品でした。
特に面白かった理由として、以下の3点です。
・何の依頼かぎりぎりまで明かされないドキドキ感
・謎の三姉妹
・人物描写が上手すぎて、犯人が見抜けない
第一の謎:ラフィール氏の依頼は?
まずマープルにとっての最初の難関は、「ラフィール氏は一体何を解決してほしいのか?」という点でした。
実際に依頼内容は一切明かされず、ヒントすらももらえずにマープルはひたすら考えます。
考えた末、ラフィール氏の元秘書であるエスターに会いに行きます。
そこで彼女が結婚したことを知りますが、肝心の事件のヒントにはなりませんでした。
しかし、エスターに会いに行ったことでラフィール氏の依頼条件をクリアしたのか、その後弁護士を通じてラフィール氏から指示をもらいます。
ここまでのマープルの推理が非常に面白かったです。
この後は実際に現地で事件を調査しにいくのですが、安楽椅子探偵の真骨頂のような場面でファンにとっては良いシーンでした。
第二の謎:ラフィール氏が解決してほしい事件とは?
さて、ラフィール氏から送られてきた書類には旅行会社からのチケットと旅行の案内でした。
ラフィール氏が生前より予約していたくらいなので、きっと何か意味があるのでしょうが、マープルはますます困惑し、指示どおり旅行へと出掛けました。
ぶっちゃけマープルがよほど賢くないと、ここまですんなり事が運ばなかったと思います。むしろかなりすごいです。
話に戻りますが、旅行に参加しても未だに事件の欠片も思い当たらないマープル。
しかし、旅行に参加する14人の中で、誰かがラフィール氏の「何か」に関係する人なんだろうと彼女は推測しました。
そして実際に旅行に参加すると、旅行客の一人が彼女に興味深い話をしてくれました。
それが、とある2人の女子生徒の殺人と失踪事件です。
謎の三姉妹について
マープルが旅行でとある村に着くと、とある三姉妹と出会います。
よくよく話を聞くと、彼女らもラフィール氏からマープルを家に滞在させろという指示があったそうです。
マープルも三姉妹も困惑する中で、彼女らと交流を図ります。
マープルがバスの乗客と三姉妹などから話を聞いて調査をする中で、ようやくラフィール氏の依頼内容が見えてきました。
この少しずつ謎が明かされる過程が非常に上手く、伏線も小出しにしているので読者としてはそれを探すのがすごく面白かったです!
特に三姉妹が登場し、マープルが彼女らの家に滞在する場面がそれはもう面白かったです。
その三姉妹はどこか暗い雰囲気で、「ねじれた家」のような感じでした。
・クロチルド・ブラッドベリースコット:長女
・ラヴィニア・グリン:次女、未亡人
・アンシア・ブラッドベリースコット:三女
三人の中でもアンシアの言動がおかしくて、そちらに気を取られた人がほとんどかと思います。
この本筋の人物から意識を反らせるのはクリスティの得意なところですが、最後の謎解きで上手すぎて感嘆したほどです。
テーマは「愛憎」
クリスティの人物描写が一番光っていた、こちらの作品のテーマは「愛憎」です。
その名のとおり、今回少女たちが犠牲になってしまった発端は、「愛するがゆえ誰にも取られたくなかったから」という感情からでした。
取られたくない気持ちはわからなくもないですが、今回の犯人は自分を自己正当化しすぎて殺人を犯す気持ちが全くわかりませんでした。
悪い意味で狂っていて、今までのマープルシリーズの犯人の中でとても犯人らしかったなと思います。
自己正当化という意味では、ちょっと「予告殺人」の犯人と似てるかもしれません。
残酷で醜く、結局自分の罪から逃れられなかった犯人を裁くマープル(復讐の女神)はとても冷徹で良かったです。
最後の展開はドラマチックでドキドキしたな〜
まとめ
シリーズの中では2番目にお気に入りになった作品です。
なんだかシリーズ後半につれ、クオリティが上がったような気がします。
個人的な好みとして、安楽椅子探偵はあまり好きじゃないのかもしれません。ホームズのようなアグレッシブな探偵のほうが展開が面白いのかも。
マープルシリーズも次の巻で最終巻です。