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「三つの棺」とは
「三つの棺」とは、著者のジョン・ディクスン・カーのフェル博士シリーズ6巻目にあたる作品です。
ちなみに、今作は「東西ミステリーベスト100」にも16位にランクインしているほど、今でも根強い人気を誇っています。
今回は「三つの棺」の感想を語っていきます!
フェル博士シリーズ(ディクスン・カー)の読む順番
ディクスン・カー作品の読む順番や、ギディオン・フェル博士シリーズの読む順番については以下の記事でご紹介しています。ご興味あればぜひチェックしてみてください!
ギデオン・フェル博士シリーズ(ディクスン・カー)の読む順番一覧|全25巻完結済み
「三つの棺」のあらすじ
あらすじ
ロンドンの町に静かに雪が降り積もる夜、グリモー教授のもとを、コートと帽子で身を包み、仮面をつけた長身の謎の男が訪れる。
やがて二人が入った書斎から、銃声が響く。
居合わせたフェル博士たちがドアを破ると、絨毯の上には胸を撃たれて瀕死の教授が倒れていた!
しかも密室状態の部屋から謎の男の姿は完全に消え失せていたのだ!
と言う感じで、今回もカーの好きな「密室」です!
とある冬の日、お馴染みのランポールくんが、「三つの棺をご存じですか?」と言って、グリモー教授に起こった不可思議な脅迫について話します。
その場にいたフェル博士は違和感を感じ、一同はグリモー教授の家をたずねに行きます。
すると、教授が胸を打たれて倒れていました。
しかし密室だったので、教授を撃った犯人は出れないはずなのに見当たらない状況でした。
果たして誰が犯人なんでしょうか?
そして三つの棺とは一体何のことでしょうか?
この作品は、話がどんどん進むにつれて事件の全貌が明らかになっていきます。ページをめくる手が止まらない作品です。
以下ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
「三つの棺」の感想(ネタバレあり)
この作品は非常に面白かったです!特に、最後の展開がもう面白くてしょうがなかったです!
犯人云々よりも「どうやって犯行に及んだか?(how done it?)」に焦点を当ててるミステリです。
かなり複雑な事件なので、人によっては読みにくいと感じる人がいるかもしれませんが、頑張れるならば最後まで読んでいただきたい作品です。
今作で面白かった点は以下の二点でした。詳しく語ります。
・フェル博士の「密室講義」
・伏線の回収が素晴らしい!
フェル博士の「密室講義」
この作品の見どころはなんといっても、p.288の密室講義です。
フェル博士が「探偵小説で”密室”として知られる名高い状況の一般的な仕掛けと、発展形態」について講義をしていきます。
いきなり密室講義?なんぞや?と思った読者も多いと思いますが、これがかなり面白いです。
ここでは7パターンの密室状況を論じています。一部抜粋しますが、詳しくはぜひ本書を読んでください!
①殺人ではないが、あたかも殺人が起こったかのような状態が起こる。
②殺人であり、犠牲者が何らかの理由により自殺か、事故により死ぬ
③殺人であり、部屋の中の何らかの機械や人により殺されるもの
④自殺だが、殺人のように見せるもの
⑤殺人であり、目くらましやなりすましから謎を生み出すもの
⑥殺人であり、犯行時は外にいたものが犯行に及んだが、部屋の中のものがやったと思われているもの
⑦殺人であり、犠牲者はずっと前に死んだと見なされるもの
ただ、こちらは網羅的なものではないと思います。
ですが、古典ミステリではよく使われるものは大体上記にあてはまります。
ちなみにこのセクションは、カーのメタフィクション(小説を通じて現実の批評をすること)ではないかと言われているそうです。
他にもドアの鍵についてのトリックも挙げられていました。
フェル博士は自分で論じている中で、今回の密室事件におけるキー「煙突」について何かを発見します。
この時点でこれ答え言ってるんじゃ…?と思い、どの密室に当てはまるか考えてみたのですがこれが一向にわかりませんでした。
そして最後に思わぬ展開になっていて、非常に驚きました。そりゃもうびっくり仰天のトリックです。
伏線の回収が素晴らしい!
いや~何度でもいいますが、最後が非常に驚きました。
自分たちが前提として考えていた事実が、一気にひっくり返されたとはこのことです。
今回の事件は二つの殺人事件が起こります。
グリモー教授と彼を脅迫していたフレイという男。
三つの棺というのは、グリモー教授の過去に関係しています。
彼と兄弟らは昔、ハンガリーで強盗を犯して刑務所を脱獄し、棺に生き埋めになっていたところグリモー教授だけが救助されました。
そして、死んだはずだった兄弟が棺からよみがえり、フレイという男としてグリモー教授に現れました。
不可解だったのが「二人とも死んだ」ということでした。
生き残った容疑者はみな、二人を殺す動機が見当たりません。
動機で多いのが金や愛ですが、それをも見つからなかったのでミステリとして非常に楽しめました。
作品の中では、数々の伏線(教会の鐘の音、グリモー教授の遺言、遺体の状態、煙突、絵師から買った絵画など)があり、それが最後に全て綺麗にまとめられたのがとても素晴らしかったです。
最後の、グリモー教授の部屋で起こった犯行方法は、絶対に読者は当てられないと思います。トリックの解説図もついていたのですが普通にわからなかったです。
複雑すぎてリアルにできるのか?という疑問がありましたが、フィクションだから面白ければよしです。
よくよく考えれば伏線のところは気づけたなということも含め、非常に読み応えのある作品でした。
まとめ
カーといえば「皇帝のかぎ煙草入れ」や「火刑法廷」が有名作として挙げられますが、「三つの棺」も読みごたえ抜群で非常に満足でした。
カーを読んだことがない方やミステリー好きは、ぜひ読んでいただきたい作品です。