「死はすぐそばに(アンソニー・ホロヴィッツ)」とは
「死はすぐそばに」とは、著者のアンソニー・ホロヴィッツが書いた、ホーソーン&ホロヴィッツシリーズの5巻目になります。
今作もよく出来ているミステリーで、シリーズを読んでいる方は必須の巻です。
今回は「死はすぐそばに」をご紹介いたします。
アンソニー・ホロヴィッツの作品について
今回のシリーズや他のシリーズの詳細については、以下でまとめています。合わせて御覧ください!
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ(アンソニーホロヴィッツ)の読む順番一覧|未完結
カササギ殺人事件シリーズ(アンソニーホロヴィッツ)の読む順番一覧|未完結
「死はすぐそばに」のあらすじと登場人物
あらすじ
ロンドンはテムズ川沿いの閑静な高級住宅地リヴァービュー・クロースで、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。門と塀で外部と隔てられた、昔の英国の村を思わせる敷地のなかで6軒の家の住人が穏やかに暮らす──この理想的な環境を、新参者の被害者は騒音やプール建設計画などで乱していた。
我慢を重ねてきた住人全員が同じ動機を持っているこの難事件に、警察から招聘された探偵ホーソーンは……。
あらゆる期待を超えつづける、〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ第5弾!
今回は、探偵ホーソーンが過去に解決した事件を作家のホロヴィッツが小説という形で改めて描いていくお話です。
なかなか新しい事件がなくネタ切れで困っていたホロヴィッツは周りの後押しもあり、ホーソーンが解決した事件「高級住宅地リヴァービュー・クロース」の資料を元に書き始めます。
ただしホーソーンから提示された条件は、一気ではなく一部ずつ情報を小出しにして書いてもらうということです。
なのでホロヴィッツは最後まで事件の犯人を知らず、読者と一緒に謎に挑戦していきます。
事件の話を聞いていくうちに、ホーソーンが過去組んでいた相棒、そして所属している組織などの謎にも迫っていくので、ぜひ読んでいただきい作品です。
登場人物(少々ネタバレ)
・ダニエル・ホーソーン:ロンドン警視庁の顧問。元刑事
・アンソニー・ホロヴィッツ:作家
・アダム・シュトラウス:厩舎の住人。チェスのグランドマスター
・テリ・シュトラウス:アダムの妻
・ウェンディ・シュトラウス:アダムの前妻
・トム・ベレスフォード:庭師の小屋の住人。医師
・ジェマ・ベレスフォード:トムの妻。宝飾デザイナー
・カイリー・ジェーン:ベレスフォード家の子守り
・アンドリュー・ペ二ントン:井戸の家の住人。元法廷弁護士
・メイ・ウィンズロウ:切妻の家の住人。書店経営者
・フィリス・ムーア:メイの同居人
・ロデリック・ブラウン:森の家の住人。歯科医
・フェリシティ・ブラウン:ロデリックの妻
・ダミアン・ショー:フェリシティの介護士
・ジャイルズ・ケンワージー:リヴァービュー館の住人。ヘッジファンド・マネージャー
・リンダ・ケンワージー:ジャイルズの妻
・サラ・ベインズ:庭師
・ジャン=フランソワ:フランス語教師
・レイモンド・ショー:トムの患者
・マーシャ・クラーク:カイリーのボランティア先の老婦人
・ジョン・ダドリー:ホーソーンの助手
・アラステア・モートン:フェンチャーチ・インターナショナルの最高経営責任者
・タリク・カーン:警視
・ルース・グッドウィン:巡査
「死はすぐそばに」の感想(少しネタバレあり)
とても面白い巻でした。個人的にシリーズの中でもお気に入りの一作になりそうです。
というのも完全にアガサ・クリスティ作品のような舞台設定(高級住宅の近隣内で起こる殺人事件)で、事件に登場する住人の背景がかなり詳細に書かれていてキャラクター像が具体的に想像できるのがすごく良かったです。
しかも事件の謎に加えて、ホーソーンの謎もかなり明かされるのでファンとしては垂涎ものでした。
というかなんでこんなに毎回全く異なるミステリーが書けるのでしょうか?
以下、詳細に語っていきます!(犯人・トリックのネタバレはなし)
どういう事件だったのか?
そもそも今回はどのような事件だったのか、整理したいと思います。
まず最初に死んだのはリヴァービュー館に住んでいた、ジャイルズ・ケンワジーです。
この人は他の住民から印象が悪く、事件直前まで色々と問題が起こっていた人物でした。なので犯行動機はほとんど住民や関係者が持っていたことになります。
次に死んだのが、歯科医のロデリック・ブラウンです。
彼はケンワジー一家にかなり悪い印象を持っていたのですが、なぜかケンワジーが殺された後日に書き置きと共に自殺をします。
書き置きにはケンワジーを殺したのはロデリック、ということが書いてありました。
しかし読んでいくうちにロデリックが自殺ではなく他殺、そしてケンワジーを殺した他の犯人がやったのではないかと疑惑があがります。
果たして誰が犯人なのでしょうか?せっかくなら読んでほしいので書きませんが、最後の種明かしが「なるほど〜〜〜!」となるよなうな満足感がありました。
事件への違和感、住民らのアリバイなどが全て伏線となっていたのが非常に面白かったです。
三人称視点で語られる過去の事件
今まではホロヴィッツの視点で事件が語られていましたが、今回は三人称視点で物語が始まります。
ホロヴィッツの視点は偏りがあったので(当たり前ですが)、三人称視点は状況が整理できるので非常よかったです。
特に面白かったのが、中盤まで三人称で語られていた事件関係者の印象が、現実に戻ってホロヴィッツが実際の現場に赴いて住人にあった時、全く印象が変わる点です。
序盤だと、仲の良い住民たちでリヴァービュー館に住んでいたケンワジー一家が悪者、みたいなイメージが強かったのですが、後半になると様々な出来事によって住民たちの別の一面が見れます。
しかもホロヴィッツの原稿も現実も別に嘘をついていないので、人間にはいろんな面があるというのがよく表現できているな〜と思いました。
アガサクリスティも人間の書き分けが非常にお上手なんですが、さすがのアンソニーホロヴィッツといったところで、彼も非常にお上手です。
ホーソーンの謎
相変わらずホーソーンについてのプロフィールはよくわかっていませんが、今回はホーソーンの後ろにいる組織について少しずつ明かされました。
今回わかったことは、
・フェンチャーチ・ナショナルインターという組織に属している
・ホーソーンの住んでいるリヴァー・コート組織の持ち物で、前に登場したハッカーの少年も属していた
ということです。
やはりまだホーソーンの子供のことなど個人的な秘密は明かされていませんが、残り5巻が非常に楽しみです!
まとめ
今回の本はまさに自分好みでした。
最後、結局ホーソーンが負けたところも、ダドリーが一矢報いたところも結末としてはほろ苦いもので面白かったです。
いつかドラマ化されないでしょうか。そしたらホーソーンはダニエルが演じてほしいです。