「薔薇のなかの蛇」とは
「薔薇のなかの蛇」とは、著者の恩田陸が書いた理瀬シリーズ3作目です。
1作目は閉鎖的な学園、2作目は魔女の洋館、3作目の舞台はイギリスの「ブラックローズハウス」という館での事件です。
今回は「薔薇のなかの蛇」について感想を語っていきます。
理瀬シリーズの読む順番について
理瀬シリーズの読む順番については、以下の記事でご紹介しています。ぜひ全巻チェックしてみてください。
理瀬シリーズ(恩田陸)の読む順番まとめ|人気ゴシックミステリーシリーズ
「薔薇のなかの蛇」のあらすじ
あらすじ
英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。
そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。
美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・デイヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。
折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。
このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。
屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。
今作はイギリスに渡った理瀬が、友人のアリスに誘われてソールズベリーにある「ブラック・ローズハウス」に訪れ、そこで起きた凄惨な事件に巻き込まれる話です。
ブラックローズハウスとは直訳すると、黒薔薇の家です。
屋敷のいたるところに「小さな5弁の薔薇の意匠」があること、5つの館があって上空から見ると「5弁の薔薇」の形になっていることが由来です。
そこを買い取ったのが、成金貴族と呼ばれるレミントン一家です。
珍しく理瀬の視点はないものの、途中からレミントン家の当主の息子アーサーの視点で物語が進みます。
ゴシックな雰囲気と凄惨な事件、不気味な登場人物など、読書をそそられる要素ばかりでとても面白いです。
「薔薇のなかの蛇」の感想・考察(ネタバレあり)
総合的には面白かったのですが、2巻目の「黄昏の百合の骨」のほうが個人的に面白かったなという印象です。
ですが、物語の展開や理瀬とアーサーの駆け引きなど、いくつか面白い点もありました。
以下は私が気になった点をいくつかピックアップしていきたいと思います。
ネタバレありなので、未読の方は絶対に読まないでください。
設定が豪華絢爛
ゴシックホラーとミステリーちっくな物語で、なおかつ舞台がイギリスだからなのか気合の入った設定になっています。
まずは冒頭は、ソールズベリーにある「ストーン・ヘンジ」表しているかのような情景描写から始まり、そこで首・手首が切られ胴体が真っ二つになった死体が発見されます。(実際はストーン・ヘンジではないと書いてあります)
胴体真っ二つになった死体、と似たような実際の事件「ブラック・ダリア事件」の話題も出てきて、ああ似たような事件が続くんだろうなと思わせる話の運びでした。
※ブラック・ダリア事件とは、ウエイトレスが胴体を切られ、血と内臓、性器をなくされ、口も切り裂かれた未解決殺人事件のこと。
この時点で盛り盛りなのに、この後に「ブラックローズハウス」にまつわる数々の噂、「聖杯」の存在、そしてウィスキーの毒混入事件、犬・人間爆弾など設定がいろいろありすぎて思わず笑ってしまいました。
詰め込みすぎかなとも思いましたが、面白かったので全然ありです。
アーサー、デイヴ、アリスについて
今回は「レミントン家の事件」と「祭壇殺人事件」の2つの事件が起こります。
メインのレミントン家の事件では、アーサーという当主の息子の視点で物語は進みます。
アーサーと弟のデイヴ、妹のアリスの3人のキャラクターが個人的にとてもお気に入りでした。
・アーサーは長男っぽく冷静沈着で、
・デイヴは美人に目がないが鋭い観察眼を持ち、
・アリスはアグレッシブで場を明るくするキャラクターです。
彼らが魅力的なので凄惨な事件でも面白く読めました。
特にアーサーがパーティーで出会った理瀬を観察し、疑ったり、駆け引きしている場面は中々見ものです。
読んでる側は理瀬がどういう人が知ってるので、何か目的があって動いてるのがわかりますが、アーサーからすると怪しさ満載です。
そりゃあそうだろうな〜と思いながら楽しみました。
アーサーの正体は?
結局、アーサーの正体は何だったのでしょうか?
個人的な予想では、キースと同じM16に近いものだと思います。
理由は、
・最初のほうで、「将来母方の伯父貴の後を継いでダウニング街に入る〜」と書いてある
・仕える主人がたった一人(陛下)と理瀬が予想してる
ということから国防系の重要職なのは間違いないと思います。
調べたら、ダウニング街はイギリスの首相官邸を指してるようなので確定かなと。
アマンダも恐らく敵情視察かなーと思いますが、それにしてはなんでアーサーと顔見知りになりたいのかなと少し疑問です。なんでだろう。
ヨハンの目的は?
「レミントン家の事件」では、当主の失踪と、当主の弟が毒を盛られました。
裏で暗躍していたのはヨハンだったらしいのですが、彼の目的がほとんどわかりませんでした。
警察は犯人の目的が「聖杯」だったという見解ですが、まさかそんなはずはありません。「聖杯」も結局は本物ではなかったのですから。
そして盗んだのはアマンダなる人物でした。
あとわかるのは「祭壇殺人事件」で被害者になった人の母国に恩を売っておきたかったことくらいです。
ちょっと情報が少ないので微妙なんですが、近々イギリスと何か情報戦争でも行うために敵情視察か何かかなーと予想してます。
ですがこの予想も、ヨハンはたかがマフィア家の息子のうちの一人なんでそんな大きなことするのか?と不思議に思います。
うーん考えてもわかりません。わかる人こっそり教えて下さい。
まとめ
とりあえず気になった点を書いていきましたが、また書き足すかもしれません。
本作は、シリーズを読んでるファンなら満足する一冊です。
恩田陸ワールドが炸裂し、これでもかというほど詰まってるのでぜひ読んでみてください。
インタビューで続きは機会があれば書くとのことなので、それまで楽しみに待ちます。(不完全燃焼なのでお願いします!!)
- 理瀬シリーズの感想一覧
- 麦の海に沈む果実
- 黄昏の百合の骨
- 薔薇のなかの蛇
- (番外)三月は深き紅の淵を